【バックキャスト】理想の未来像を実現するためのフレームワーク

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 バックキャスティングは、理想とする未来から考え、どのようなステップを踏んでいけば理想の未来を実現できるか逆算して考える手法です。VUCAと呼ばれ不確実性の高い時代において、理想の未来を実現に導く手法として注目されています。バックキャスティングの特徴として、現在の延長線上にはない理想の未来に行き着くためのアプローチを検討することができる点があります。逆に、現状を理解し積み上げ型で進めていく方法をフォアキャスティングといいます。決して、バックキャスティングがフォアキャスティングに対して優れているという訳ではなく、目的に応じて使い分ける必要があるのが注意点です。
 本記事では、バックキャスティングの特徴や事例、そしてバックキャスティングを活用するためのフレームワークを紹介します。

バックキャスティングの活用事例

 本題に入る前にバックキャスティングを活用している代表事例を紹介します。
 バックキャスティングで計画された有名なプロジェクトにアポロ計画があります。アポロ計画は1960年に米国のジョン・F・ケネディ大統領が1960年代中に人類を月に到達させるとの声明を発表したことから始まっており、大きな目標を最初に掲げそのために必要なアクションを検討し実行されました。

 他の事例としては最近注目されているSDGsも、2030年までに達成すべき理想的な未来をイメージし、そのために必要なアクションを具体化するバックキャスティング手法をとっている代表例です。

活用手順

バックキャスティングは、将来に向けてのプランニング手法として注目を集めています。企業や組織のビジョン設定、プロジェクト計画、SDGsのような世界規模の命題から、ダイエットといった個人の目標設定まで様々な場面で活用することができます。本章では、バックキャスティングのフレームワークを紹介し、ビジネスにおいてどのように活用するかを解説します。

 図はバックキャスティングを活用するためのフレームワークです。①の理想の未来像作成、②現状と課題の把握、③実現ステップの順に検討していきます。それでは詳細について見ていきましょう。

理想の未来像を作成

バックキャスティングではまず理想の未来像を明確に定義することから始めます。この理想の未来像から考えることがバックキャスティングの一番のポイントですので、なぜその未来を実現したいのかしっかり検討すると良いでしょう。実現したい未来像をイメージし、その未来を実現するために重要な要素(KSF)を考えます。

  • WHY:なぜその未来を目指すのか
    • 未来像を実現するための目的を明確にします。この目的があることで、計画を進める上での方向性が明確になり、各ステップの優先順位を決定することができます。
    • 未来像をしっかり検討するために5WHYで深掘りしていくのもおすすめです。
  • KSF(Key Success Factor):主要成功要因
    • 理想の未来が実現できているとする主要な要素を決めます。フレームワークでは3つのKSFを設定するようにしています。

現状と課題の把握

目指すべき理想の未来像が定義できたら次に現在の状況(As-Is)や課題(Issue)を把握します。ここで分析した現状から、理想の未来実現に向けてステップを進めていきます。

  • As-Is:企業や業界、個人の現状を分析
    • 自社や業界の現状を把握することが重要です。自社の強みや弱み、業界の動向、理想の未来像に関する自分の現状などを分析し、未来像を実現するための課題を明確にしていきます。
  • Issue:現状の課題
    • 理想の未来を実現するために解決すべき課題を洗い出します。大小様々な課題があると思いますが、理想の未来を実現するためという目的に沿って重要な項目を考えます。

実現ステップ

最後に、現状から未来像に至るための具体的なアクションを考えます。フレームワークでは実現までに3つの段階を区切っています。必ずしも3つである必要はありませんが、そのくらいが最初の検討としては調度良いと思います。

  • WHAT 未来像を実現するために必要な要素を検討します。
  • HOW WHATを実施するための、具体的な内容/手段を検討します。WHATであげた抽象度の高い要素を、実施するための具体的な施策に落としていくイメージです。

以上が、バックキャスティングの活用手順です。次の章では具体例を挙げて実際に活用する方法を紹介します。

バックキャスティングの具体例:ダイエット

バックキャスティングの活用手順を紹介したので、ここでは身近な例であるダイエットを題材に実際に活用してみます。

  • WHY:理想の未来像を描く
    • ダイエットによって実現したい理想の未来を描きます。ここでは、なぜなぜ分析(Five Whys)を用い具体化します。
      • なぜダイエットをしたい/体重を落としたいのか?
        • 健康的な身体にしたい
      • なぜ健康的な体にしたいのか?
        • いつまでも元気いっぱいでいたい
        • 見栄えの良い身体になりたい
      • なぜいつまでも元気いっぱいでいたいのか?
        • 美味しい食事を楽しんだり、元気に旅行したいから
      • なぜ見栄えの良い身体になりたいのか?
        • 同僚や友人、恋人からの注目を集めたいから
    • ダイエットの目的:体力があり、健康的でスタイルの良い身体作りをする

なぜなぜ分析によってダイエットの目的が深掘りできました。単純に体重を落とすではなく、体力を付けつつ他人に憧れられるようなスタイルの良い身体作り、と目的が明確になっています。

  • 主要成功要因(KSF)を考える
    • ハーフマラソンを完走できる体力
    • 適度に筋肉が付いた引き締まった身体(体脂肪率15%、筋肉量40%)
    • 健康診断で問題がない

体力基準としてハーフマラソン完走できれば十分だと考えました。スタイルとしては大き過ぎず細過ぎずに引き締まったラインとして、健康な一般男性の基準内で高めの数値を設定しました。健康の目標は健康診断で問題がないとしました。今回の目標に対しては過大/過小になることなく設定できたと思います。KSFを上手く設定するためにも、未来の理想像をしっかり考えるのが大事なのがわかると思います。
KSFを考えたら次は現状を分析し、KSFに対する課題を洗い出し解決への実行ステップを作ります。

  • 現状分析
    • 体力:連続して走れる距離は2km
    • 身体: 体脂肪率は25%
    • 健康診断: 健康診断で腹囲や尿酸値が基準値を超えている
  • 課題(Issue)
    • Issue1:トレーニングの継続
    • Issue2:知識(健康的な食事や必要な運動について)
    • Issue3:バランスの取れた食事と休養

現状を分析したら理想の未来像を実現するためのステップを考えます。フレームワークでは、WHAT:何を実現するのか、HOW:具体的にどうするのか、という項目を用意し抽象的な内容と具体的に内容を3ステップにわたって記載できるようにしています。

  • 実行ステップ
    • ステップ1
      • WHAT
        • 食事管理:今の食生活を振り返り、摂取カロリーや栄養素(脂質、タンパク質、ビタミンなど)のバランスを確認する
        • トレーニング:無理なく継続できるトレーニング内容を考え、まずは始める
        • 知識:バランスの良い食事、継続できるトレーニングメニューを調べる
      • HOW
        • 食事管理:あすけんなどのダイエットアプリを使い、日々の食事を見える化する
        • トレーニング:近場のジムに入会し、とにかく週1で通うようにする
        • 知識:健康系YouTuberのチャンネルを見て基礎知識を付ける。

理想の未来像実現に向け、最初にやるアクションを決めました。同様にしてステップ2、ステップ3のアクションを計画したら、実際に実行しながら振り返り、アップデートするというPDCAを回し目標達成に向けて邁進することができます。

終わりに

バックキャスティングの概要について説明し、フレームワークを用いてバックキャスティングを活用する手順と、ダイエットを題材にした具体例を紹介しました。
バックキャスティングを活用することで、理想の未来像を実現するために現状課題を踏まえた具体的なアクションプランを策定することができます。未来を見据え、戦略的にビジネスを展開するために、ぜひこのフレームワークを活用してみてください。

参考リンク

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